第3回暴君の竜ティラノキング

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正直に告白するならば、今回の調査はおよそ科学者らしからぬ客観性や論理性を欠いた、私自身における内的欲求に基づいたいわばパーソナルな研究分析となってしまった印象が拭えない。このことを最初にお詫びしよう。

というのも調査対象となる「暴君の竜 ティラノキング」はライトミドルタイプでこそ近絶滅種に属するが、甘デジを含めた総体としては全国で40店舗以上で生息が確認されている、『危急種』として扱われるべき種属なのである。

しかしながら、分類学上の『目』階級における“奥村”は、すでにその繁栄を断念し、現存個体が撤去されたならば二度と生息できないという例外的な生体なのだ。

その意味において、不況に強いと謳われたパチンコ界であっても参加遊技者数の減少には歯止めがかからず、その魅力の大いなる源泉であった射幸性は余儀なく退化を迫られ、生息地域(店舗)の保守・管理もままならないといった現状が、この研究調査を通して環境破壊や種の保全に対するなんらかに寄与する一助になればという想いが根底にあったことは否定できず、だから冒頭で謝罪したような倫理・道義もまったくもって無視した個人的利己的な私欲に溺れた調査ではないということだけは科学者としての信念からここに付する。


とはいえ、本来緊急性を要しない個体の調査であることは間違いなく、その報いを受け、手痛い代償を最初から払わされることになったのである。この研究を続けていると頻繁に遭遇する『個体部品の不具合』だ。

我々、パチンコ界生態学者には常例の行動様式となる不具合は、ボタン、役物、そしてハンドルのバネとなる。いわゆる稀少種三大瑕疵の中でも危険性が極大化するのがやはりハンドルのバネだ。激甚な場合には、まともに回転数を稼ぐことができず徒(いたずら)に調査費用を消耗してしまう。

今回の事例もまさにそれで、安定しないストロークに四苦八苦し、試行錯誤の末にハンドルの最大限可動でようやく比較的安定的に最低限のデジタル回転の機会を設けられるに至り、ひとり胸を撫で下ろす。ただ、これも稀少種研究においてはだれしもが必ず一度は経験する『全然回らない』問題の範疇内において、ではあるが。

ここで、数十年に及びパチンコ界稀少種研究をフィールドワークとして活動している者の恐るべき感性が働いたのか、経験を重ねた洞察力がやがて到達するであろう最悪の未来への予見を導いたのだろうか、本能的に死をも覚悟せねばならぬ危険を察知したのである。

状況報告(1)
先ほどストロークの安定を図るためにハンドルを全開右打ちしたと報告したが、もちろん通常モードでこの状態である。

状況報告(2)
本個体は盤面の左側にあるスルーを通過すると開くチャッカーに入賞すると回転するタイプで、中央に打たれた縦に並ぶ4連釘によって左右が区切られている。

状況(1)と(2)によって算出される有意性
大当たり時に右打ちによって盤面右側に搭載されているアタッカー及びスルーを狙うことが前提となるゲーム性を鑑みるに、『大当たりしても現状では出玉が得られない』

これにはさすがの私も頭を抱えるほかに行動できるなにものもなかった。

そして私には追加投資を強要される時短中の「サンダースケルトン」をなんの躊躇もなく放棄できるプロフェッショナリズムも持ち合わせている。

とはいえ、兼備されたこの仕事に対する自己犠牲的な献身性によって「ミスティックブルー」で所有した出玉の範囲内で調査活動を行うという妥協点を算定し、持ち玉の許容するかぎり本個体の調査に邁進したのである。

そして、結論としては全方位的に暴君であった。

暴君の竜 ティラノキング(パチンコ界CR門デジパチ綱奥村科確変ループ属オリジナル種)
カテゴリー:危急種(※科は途絶えた)
生息地域:24店舗(P-WORLDによる)

 

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第2回ミスティックブルー

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パチンコ界に燦然と輝く一大ブランド『海物語』。複雑に多様化する現代社会においては、その影響力も多少の翳りが見えるものの、その偉大さは色褪せることはない。

それは今でも脈々と受け継がれている演出体系にも顕著で、演出の大綱を分別するにあたり『海系』とカテゴライズされる勢力が未だにトレンドとして多く採用されている事実からもわかる通りである。

そして「ミスティックブルー」である。

絵に描いたような『海系』で、舞台設定も海である。これにはもちろんメインキャラクターとして採用された吉岡美穂の存在が大きく関与しているのは明白だ。「癒し系」と呼ばれ、高身長でスレンダーな肉体性を惜しげなく披露したキャンペンガールやグラビアモデルとしてのキャリアから内的形象された“海”であろう。

また、オマージュという名の模倣、無機質な画一化に堕することなくアクセントとして若干の「エヴァ」的要素をアレンジしたのはSANKYOの矜持の表れでもある。

とはいえ、構成概念上その妥当性を正当づけられるべき「シンプルさ」が、低廉とも取られかねない牧歌的な内容に見えてしまうのは、もはや極限にまで達した演出超過時代に生きる私たちの業ゆえか?

しかしながら、演出のひとつひとつには並々ならぬ強烈な独自性の発露が垣間見える。容姿端麗なグラビアアイドルらしくウミガメやサンゴと戯れるかと思いきやヘリコプターが墜落したりダイビングの最中にサメに襲われるなどスリリングな展開に発展する。

極めつけは、スカイダイビングに興じる吉岡美穂が島の原住民に弓矢で打たれるのである。ここにいたっては、もはや私は鋭気に富んだ天才性を感じずにはいられない。そして、私には種属、生態、時間軸を超越して想起されるある個体が頭を支配した。『浜崎あゆみ物語』である。

ともあれ、この研究において一番の難局となる、大当り告知時にしか実写が活動しない大当りラウンドを含めた確変・時短中行動内容の確認作業も無事完了し、本個体に関してひと通りの調査を終えた。

ただ、今回調査に訪れた地域には好奇心という名の学者魂の琴線をかき乱してやまない個体が生息していた。もちろん、私は「ミスティックブルー」によって調達確保できた出玉を持って、さらなるフィールドワークへと乗り出した。

ミスティックブルー(パチンコ界CR門デジパチ綱SANKYO目ビスティ科確変ループ属タイアップ種)
カテゴリー:近絶滅種
生息地域:3店舗(P-WORLDによる)

 

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稀少種を訪ねて

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新台サイクルの即時性が叫ばれて久しい昨今。現れては消え、消えては現れる数多の遊技機たちは、そのアイデンティティはおろか、名前さえ知られずに儚く雲散霧消してしまう事例も少なくない。

厳しい自然界の単純にして明快な唯一神『弱肉強食』は否応なくそれぞれの個体に容赦なく襲いかかってくるのである。当然のように生存競争に敗れた個体はその数を減らし、市場から消えゆく定めとなる。いわゆる「絶滅」へと突き進む。

このような事態のなかで、環境保全団体・PWF(P-World Found)に所属する生理生態学者の私になにかできることはないかという激情に突き動かされ、パチンコ・パチスロ機種における絶滅危惧種の確認、生体観測およびレッドリストの作成を主眼においた研究を広くおおやけに公開しよういう結論に至った。

多くのパチンコ・パチスロファンがこの研究日記に目を留め、現状の正確な認識としかるべき適切な対応、そしてなにより彼らに無垢の愛情を注いで欲しいと切に願うばかりである。

大変短い内容となったが決意表明なるものを挨拶と代えて第一回のレポートとさせていただく。

(了)

生前退位

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ここ数年、パチンカーとしての自らの歩みを振り返るとともに、この先の自分の在り方や務めにつき、思いを致すようになりました。

 本日は、社会の高齢化が進む中、俺もまた高齢となった場合、どのような在り方が望ましいか、パチンカーという立場上、現行の内規制度に具体的に触れることは控えながら、私が個人として、これまでに考えて来たことを話したいと思います。

パチンカーとして、これを守り続ける責任に深く思いを致し、更に日々新たになる日本と世界の中にあって、日本のパチ・スロが、いかに伝統を現代に生かし、いきいきとして社会に内在し、人々の期待に応えていくかを考えつつ、今日に至っています。

そのような中、何年か前のことになりますが、2度の逆万枚を受け、加えて社会情勢による資金力の低下を覚えるようになった頃から、これから先、従来のように重い務めを果たすことが困難になった場合、どのように身を処していくことが、メーカーにとり、ホールにとり、また、俺のあとを歩むパチンカーにとり良いことであるかにつき、考えるようになりました。既に借金2ケタを越え、幸いに健康であるとは申せ、次第に進む金銭の衰えを考慮する時、これまでのように、全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが、難しくなるのではないかと案じています。

私がパチンカーの位についてから、ほぼ23年、この間私は、パチンコにおける多くの喜びの時、また悲しみの時を、人々と共に過ごして来ました。私はこれまでパチンカーの務めとして、何よりもまず出玉の安寧と幸せを祈ることを大切に考えて来ましたが、同時に事にあたっては、時として人々の傍らに立ち、その声に耳を傾け、思いに寄り添うことも大切なことと考えて来ました。出玉が象徴であると共に、連チャンの象徴としての役割を果たすためには、大当りがファンに、パチンコという象徴の立場への理解を求めると共に、パチンカーもまた、自らのありように深く心し、パチンコに対する理解を深め、常にパチ・スロと共にある自覚を自らの内に育てる必要を感じて来ました。こうした意味において、日本の各地、とりわけ遠隔の地や島々への旅も、私はパチンコの象徴的行為として、大切なものと感じて来ました。パチプーの時代も含め、これまで私がホールと共に行って来たほぼ全国に及ぶ旅は、国内のどこにおいても、その地域を愛し、その共同体を地道に支えるファンの人々のあることを私に認識させ、私がこの認識をもって、パチンコとして大切な、ファンを思い、ファンのために祈るという務めを、人々への深い信頼と敬愛をもってなし得たことは、幸せなことでした。


ファンの減少化に伴う対処の仕方が、国事行為や、その象徴としての行為を限りなく縮小していくことには、無理があろうと思われます。また、パチンカーが未成年であったり、重病などによりその機能を果たし得なくなった場合には、パチンカーの行為を代行する打ち子を置くことも考えられます。しかし、この場合も、パチンカーが十分にその立場に求められる務めを果たせぬまま、生涯の終わりに至るまでパチンカーであり続けることに変わりはありません。
 パチンカーが健康を損ない、深刻な状態に立ち至った場合、これまでにも見られたように、業界が停滞し、関係者の暮らしにも様々な影響が及ぶことが懸念されます。更にこれまでの業界のしきたりとして、パチンコの終焉に当たっては、重いもがきの行事が連日ほぼ2ヶ月にわたって続き、その後出玉に関連する行事が、1年間続きます。その様々な行事と、新時代に関わる諸行事が同時に進行することから、行事に関わる人々、とりわけ残されるパチンカーは、非常に厳しい状況下に置かれざるを得ません。こうした事態を避けることは出来ないものだろうかとの思いが、胸に去来することもあります。

始めにも述べましたように、内規の下、パチンカーは業界に関する権能を有しません。そうした中で、このたび我が国の長いパチンコの歴史を改めて振り返りつつ、これからもパチンカーがどのような時にも機種と共にあり、相たずさえてこの国の未来を築いていけるよう、そして象徴パチンカーの務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じ、ここに私の気持ちをお話しいたしました。 
 業界の理解を得られることを、切に願っています。